College of Agriculture,Food and Environment Sciences, Department of Environmental and Symbiotic Science
松林圭 マツバヤシ ケイ
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Last Update :2025/06/09

Researcher Profile and Settings

Name

MATSUBAYASHI Kei

Affiliation (Master)

College of Agriculture,Food and Environment Sciences, Department of Environmental and Symbiotic Science

Affiliation & Job

Rakuno Gakuen University

Degree

PhD, Hokkaido University

Association Memberships

The Ecological Society Japan
Society of Evolutionary Studies, Japan
The Entomological Society of Japan

Research Activities

Published Papers

Extremely divergent host plant acceptance with gene flow between sympatric host races of the phytophagous ladybird beetle Henosepilachna diekei, Matsubayashi Kei W.; Kahono Sih; Hartini Sri; Katakura Haruo, Entomological Science, 22, (4) 404 - 412,   2019 10
Application of next-generation sequencing to the study of non-model insects, N. Wachi; K.W. Matsubayashi; K. Maeto, Entomological Science, 21, (1) 3 - 11,   2018 03
Genetic divergence with ongoing gene flow is maintained by the use of different hosts in phytophagous ladybird beetles genus Henosepilachna, Kei Matsubayashi; Tetsuo I. Kohyama; Norio Kobayashi; Satoko Yamasaki; Masakazu Kuwajima; Haruo Katakura, Journal of Evolutionary Biology,   2017 04
Redescription of the phytophagous ladybird beetle Henosepilachna diekei and descriptions of the related species from Indonesia, Kei Matsubayashi; Sih Kahono; Sri Hartini; Naoyuki Fujiyama; Haruo Katakura, Insecta Matsumurana, 72, 1 - 16,   2016 09
Introgression and habitat segregation in a pair of ladybird beetle species in the genus Propylea (Coccinellidae, Coccinellinae) in Northern Japan, Hiromu Suga; Wataru Hirano; Toru Katoh; Kei Matsubayashi; Haruo Katakura, Zoological Science, 33, (6) 603 - 610,   2016 08
Heterospecific sperm reduction in interspecific crosses between two closely related phytophagous ladybird beetles, Henosepilachna vigintioctomaculata and H. pustulosa (Coleoptera: Coccinellidae), Tetsuo I. Kohyama; Kei Matsubayashi; Haruo Katakura, Entomological Science, 19, (1) 49 - 54,   2015 12
Geographic distribution, host plants, and morphological variation of the currently radiating phytophagous ladybird beetle Henosepilachna diekei, Kei Matsubayashi; Sih Kahono; Naoyuki Fujiyama; Jun Yokoyama; Department of Biology; Faculty of Science; Yamagata University; Suranga Basnagala; Yaowaluk Monthum; Rosli Hashim; Haruo Katakura, Journal of Natural History, 50, (5-6) 363 - 376,   2015 09

Conference Activities & Talks

やっかいなお隣さんが多様性を生み出す?, 松林 圭, 日本生態学会, 近縁種が出会うとき、そこには様々な葛藤と競合が生まれる。その結果として現れるのは主に融合か反発かの2択だと考えられてきた。この反発にあたるフェーズ、つまり形質置換(Character displacement)および隔離の強化(reinforcement)は、進化生態学において長らく興味の対象となってきたが、それほど多くの実例が報告されてきたわけではなく、いわば教科書には載っているという程度の意味合いのものであった。近年、生物が異なる環境へ適応することで生殖隔離が進化する生態的種分化に代表されるように、種分化とその関連分野で様々な概念的整理が行われた結果として、形質置換が副産物として種分化を生み出すケースや、これまで見過ごされてきた隔離強化のケースがあることが徐々にわかってきた。ここでは近年の隔離強化に関する考え方の変遷を説明したうえで、発表者が行ってきた複数の昆虫における種分化研究のデータから実例を紹介する。
「種分化は地理変異に宿る!?多様化メカニズムに系統地理から迫る」, 松林圭, 日本進化学会
Dovetailでせまるテントウムシの全ゲノムシーケンスと種分化機構, 松林 圭, 日本生態学会
テントウムシの交雑を介した平行的な生態的種分化, 松林 圭, 種生物学会
植食性テントウムシ、エピラクナが問う“種”とは何か, 松林 圭, 信州昆虫学会
異なる寄主植物への適応で生じる雑種の適応度低下, 松林 圭, 日本生態学会, 異なる環境への適応によって起きる生態的種分化においては、局所適応にともなって特定環境への特殊化が生じる。この際、異なる環境に適応した両親から生まれた雑種はその中間の形質を持つため、どちらの環境にも不適応になると予想されているが、その実例はごくわずかしか得られていない。インドネシアで同所的に生息する植食性テントウムシ(Henosepilachna diekei)のホストレースは、異なる寄主植物への特殊化のみで種分化が起きている稀な例である。このホストレースを交配させたF1およびバッククロスの雑種において、両親レースの寄主植物上における適応度を複数の項目について測定した。生存率・生育日数・摂食開始日数それぞれにおいて、雑種は両親レースに比べて様々な程度で劣っており、生育に関する適応度全体で見たとき、雑種は両親レースよりも相当程度の不利益を被ることが示唆された。このことから、異なる寄主植物への適応それ自体が、雑種の適応度を生活史の様々な側面において低下させ、集団分化をより促進しているという予測が確かめられた。
Adaptive radiation and evolution of isolation barriers caused by specialization to different host plants in a phytophagous ladybird beetle, Kei Matsubayashi, 個体群生態学会, Adaptive radiation is rapid diversification in a lineage correlating to ecological divergences. Nonetheless of the impact on biodiversity, the ecological and genetic mechanism of such rapid diversification remains unclear. To elucidate evolutionary causes of adaptive radiation, we detected the isolating barriers involved in the earliest stage of adaptive radiation of a phytophagous ladybird beetle, Henosepilachna diekei. Beetle populations collected from 4 host plant species showed highly specialized food acceptance and survivorship on the original host plant irrespective to the phylogenetic relationships. As these populations exhibited relatively weak isolating barrier other than host plant uses, we suggest that divergent host adaptation directly causes adaptive radiation in the species.
寄主変更が生み出す多次元的ニッチ分化と生殖隔離, 松林 圭; 小路 晋作; 小泉匡則; 上野秀樹, 日本生態学会, ニッチは、野生生物の時空間上における棲み場所であり、無数の環境要因に対して決められる多次元的なものである。この“ニッチの多次元性“は古くから概念的に認められているものの、それが進化や多様性創出の現場においてどのような役割を果たしているかは、ほとんど調べられてこなかった。特に、分化してから時間を経た遠縁の種間では、ニッチ利用の違いに加えて、様々に異なる形質が進化してしまうため、ニッチの違いという要因のみに焦点を当てることが難しくなる。我々は、異なる寄主植物を利用することでのみ、生殖的に隔離されている植食性昆虫のホストレースを用い、複数年に渡る昆虫とその寄主植物の個体群動態を調査することで、寄主植物の違いによって引き起こされたニッチ分化の程度を評価した。これらのホストレース間で顕著に分化した形質は、異なる寄主植物の季節消長や資源量に対する局所適応の結果として生じており、そのうちのごく一部が、生殖隔離としてホストレース間の遺伝子流動を制限していることが示された。 本発表では、この系を例としてニッチ分割が多様性創出に及ぼす役割を示すとともに、今後ゲノミクスの手法が個体群動態を中心とした野外での小進化研究に果たす可能性について、期待とともに話したい。
RAD-seqによる大量データで迫る日本産マダラテントウの種分化過程, 松林 圭, 日本昆虫学会・日本応用動物昆虫学会合同大会, 短時間で大量の分子データが取得できる次世代シーケンサーの登場によって、これまでブラックボックスになっていた種内外における詳細な系統関係や、集団間の遺伝的な構造の比較が可能となった。この新技術によって特に大きな恩恵を受けたのが、ごく最近分化した種間あるいは集団間の関係を扱うことが多い種分化分野である。今回は、利用できる寄主植物の範囲が異なることによってごく最近種分化した三種の日本産マダラテントウに関して、次世代シーケンサーによるRAD-seqを用いた系統推定と集団遺伝学的解析を行った結果を示し、この新手法が種分化研究にもたらしたインパクトについて紹介するとともに、今後の展望についても議論したい。

Misc

“種”のちがいを量る, 松林 圭,   2019 10 , 10.18960/seitai.69.3_171, 種分化とは、生物の多様性を生み出す原動力であり、“潜在的に交配可能な集団間に、交配を妨げる遺伝的機構(=生殖隔離)が進化すること”と定義できる。生物学的種概念を基礎とするこの種分化の定義は、広く進化生物学において受け入れられてきたが、実際の生物にこの基準を適用することには困難が伴う場合が多い。異なる個体群が、果たして異なる種にあたるのか否かは、進化生物学、生態学のみならず、分類学的にも重要な問題であった。この“種のちがい”を定量化する試みは、遺伝子マーカーを使用するものや形態的相違を判別形質とするものなど、様々な手法が使われてきた。これらはどれも、生殖隔離の存在やその強度を間接的に推定するものである。最近では、野外観察や行動実験を通して生殖隔離を直接測定する手法が普及しており、隔離障壁の進化やメカニズムに関する理解が大きく進んでいる。本総説では、種のちがいを量る方法として生殖隔離の定量化に着目し、近年になってこの分野で得られた知見を紹介する。
種の境界: 進化学と 生態学、 分子遺伝学から 種分化に迫る, 山口 諒; 松林 圭,   2019 10 , 10.18960/seitai.69.3_145, 生物学的な「種」は生態学のみならず、多くの分野で研究対象の選択時に考慮される大切な単位・概念である。新たな種を生み出すプロセスである種分化は、生物多様性の創出要因として重要であり、そのメカニズムはダーウィンやウォレスの時代から注目を浴びてきた。一方で種の境界は時に、亜種やエコタイプなど様々な階層を含め非常に曖昧な場合が存在する。本特集では、集団が「種」として確立される際に重要である生殖隔離機構の進化に焦点を当て、野外や実験下での観測から、その分子遺伝学的基盤の解明、理論までを総説として取りまとめる。近年、本分野に関する日本語の解説は限られており、種分化のメカニズムとパターンを概観する本特集を通して、生態学研究の対象となる「種」の境界が成立する過程の理解が深まることを期待する。
生態的種分化 -適応の視点から多様化のメカニズムを探る-, 松林 圭; 藤山 直之,   2016 10 , 適応と多様化との関係を問う“生態的種分化”は、古典的な仮説でありながらも現代進化生態学において大きな進展を見せている。“異なる環境への適応によって隔離障壁が進化する”というこの仮説は、いわば伝統的な自然選択説の現代版であり、生態学の各分野で蓄積された膨大なデータを、進化生物学分野で培われてきた適応と種分化に関するアイディアによって俯瞰する形で成り立っている。生態的種分化は、進化学や生態学、遺伝学といった複数の分野を横断する仮説であるが、近年のこれらの分野における概念的統合およびゲノミクスとの融合に伴い、理論的に洗練された検証可能な作業仮説として、いまや多様性創出機構の議論に欠かすことのできないものとなってきた。日本の生物多様性の豊かさを考えたとき、潜在的に多くの生態的種分化の事例が潜んでいるものと思われるが、残念ながら日本の生物を対象とした実証研究は、今のところあまり多くない。このような状況を踏まえ、本総説では特に生態学者を対象として、生態的種分化のもっとも基礎的な理論的背景に関して、その定義、要因、地理的条件、特徴的な隔離障壁、分類群による相違を解説し、また、その対立仮説である非生態的種分化との違いを説明する。さらに、現在の生態的種分化研究の理論的枠組みにおける弱点や証拠の薄い部分を指摘し、今後の発展の方向性を議論する。

Research Grants & Projects

Japan Society for the Promotion of Science, Grants-in-Aid for Scientific Research, Investigation on "meiofauna paradox" with using echinoderid kinorhynchs, 20210401, 20240331, 山崎 博史; 松林 圭, 令和3年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、研究代表者自身での採集調査を断念し、研究協力者への代理採集を依頼し、瀬戸内海~玄界灘産サンプル、および東京大学三崎臨海実験所にて採取された泥サンプルを得た。この中から分子実験に使用可能な状態で、多数の動吻動物を得ることに成功した。この内、瀬戸内海サンプルにはEchinoderes rexが、三崎臨海実験所サンプルにはEchinoderes sensbilisが含まれており、本研究の解析に利用すべく、DNA抽出を行った。 また研究代表者が研究開始前に採集済みであったサンプルを精査し、青森県浅虫・熊本県天草・和歌山県白浜サンプル(E. sensibilisおよびE. rex)、北海道奥尻島・静岡県下田・鹿児島県種子島・沖縄県沖縄本島・渡嘉敷島サンプル(E. sensibilis)、瀬戸内海・日本海(北海道沖)・東シナ海(奄美大島沖)サンプル(Echinoderes tchefouensi)のDNA抽出を実施した。 令和3年度は各種の遺伝構造の概観を知るため、特にCOI遺伝子塩基配列決定を優先して行った。先行研究データを合わせると、現在E. sensibilis 12集団220個体、E. rex 4集団28個体、E.tchefouensis 3集団3個体が解析に使用可能である。この内、E. sensibilisでは、COI遺伝子塩基配列について、集団内・集団間で程よい遺伝的分化が見られている。一方でE. tchefouensisではCOI遺伝子を見ると、集団間で遺伝的分化が大きく、複数の隠蔽種を含む可能性が示唆されている。反対にE. rexではCOI遺伝子の集団内・集団間遺伝的差異が非常に小さく、集団的遺伝構造を明らかにするためには、別遺伝子マーカーを使用する必要がある。
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 近縁な寄主植物への隠蔽的な局所適応が植食性昆虫の種分化を促す効果の検証, 20190401, 20230331, 藤山 直之; 松林 圭; 横山 潤, ヤマトアザミテントウが各地点で寄主としているアザミ類に対して示す選好性、および各アザミ上でのテントウの成育能力に関し、青森県と福島県の2地点のほか、昨年度まで対象に加えられていなかった秋田県の1地点を対象に飼育実験を実施した。本年度までの3年間で、計画していた5地点(青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県)からのデータがほぼ揃い、以下の3点が明らかになった。 1.成虫の食性:地点の組み合わせによって、局所適応の存在、つまり潜在的な“生息場所隔離”の発達が支持される。 2.幼虫の成育能力:地点の組み合わせによって、潜在的な“移入者の生存不能”の発達が支持される。 3.以上の潜在的な局所適応の発達の程度は、地点間の地理的距離そのものよりアザミ類の質的変異に大きく影響されており、とりわけ青森県での寄主であるミネアザミの質が他地点のアザミと大きく異なっていることが関与している。 青森県と福島県のテントウ集団およびこれらが寄主としているアザミ類を対象に、網室への放虫実験を実施し、2集団間に潜在的に発達している局所適応の程度を定量的に評価した。2種のアザミ上で作用する隔離障壁(生息場所隔離と移入者の生存不能)の強さは非対称であり、青森県のミネアザミ上での隔離強度が0.7~1.0とほぼ完全であったのに対し、福島県のナンブアザミ上では-0.3~0.3であった。全体として、現在の局所適応を通じて潜在的に発達している生殖隔離の強度は約0.5となり、種分化の途上にあると捉えることができるものの、現在の状態で隣接させた場合には遺伝子流動が生じ局所適応そのものが崩壊することが予測された。 テントウ集団間の遺伝的関係(遺伝的分化と遺伝子流動の規模)の解明に関しては、解析に用いるサンプルの選定およびDNA抽出をほぼ終え、解析に用いるSSRマーカーの絞り込みを実施できる段階となった。
Japan Society for the Promotion of Science, Grants-in-Aid for Scientific Research, Test of the "cascade reinforcement" and character displacement on multiple characters of seashore flightless weevils, 2019, 2021, 松林 圭; 小島 弘昭, これまでの研究で、スナムグリヒョウタンゾウムシ(以後スナムグリ)とトビイロヒョウタンゾウムシ(以後トビイロ)の間では、同所的な集団間で異所的な集団間よりも雄交尾器の変異が大きいという生殖的形質置換の存在が明らかにされている。初年度は採集した全国の集団を用いて系統解析と形態比較を行い、この生殖形質の変異が遺伝的なクラスター間で起きているのか、クラスター内部で起きているのかを検証した。二年目以降はより生態学的な調査に重点を置いて両者の微小分布を比較し、同所的な地域では異所的な地域よりもスナムグリが海岸側に偏り、トビイロが陸側に偏る生息地の分化が生じていることが判明した。本年度は交尾器の形態が大きく異なる地域間で交尾実験を行い、形質置換に伴った交尾選択があるかどうかを検証した。この結果、各地域集団それぞれで同型交配の傾向が検出されており、種内でも地理的な集団間では交尾選択があることが判明した。一方、異種との間ではより強い交尾選択があり、これは同所的か異所的かという地理的な状況とはあまり関係がなかった。以上の結果は、種内でも遺伝的に異なるクラスター間の集団を用いて行ったものである。この実験から、交尾時間が種内より種間で顕著に長くなることが判明した。種間交配での卵孵化率はゼロであり、かつ交尾時間が長くなるというデメリットがあることから、同所的な雄交尾器の変異と交尾選択は異種雌との不適応な種間交配(=繁殖干渉)を避けるために種の違いが増大する方向に進化したものと考えられる。
Japan Society for the Promotion of Science, Grants-in-Aid for Scientific Research, Experimental reproduction of ecological speciation caused by inter-specific hybridization and elucidation of its genetic mechanism, 2016, 2018, Matsubayashi Kei, In Japanese phytophagous ladybird beetles, we certified that a population of the blue cohosh specialist species in Southern Hokkaido is formed as homoploid hybrid speciation caused by hybridization between closely related thistle specialist species and generalist of blue cohosh and thistle in Hokkaido. The blue cohosh specialist species, which has been thought to be a single species has evolved independently multiple times throughout Japan archipelago. Artificial F1 hybrid offspring of the two parental species in Hokkaido could accept both parental host plants, while they demonstrated significantly reduced larval survivorships on thistle. These results indicate that the blue cohosh specialist species in Southern Hokkaido evolves avoidance against unfit thistle plant after hybridization.


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